2018年の民法改正案による相続手続への影響をご紹介します

2018-07-18

■はじめに

2018年の3月13日に相続に関する民法改正が閣議決定されました。このことにより、相続に関する分野に大きく影響を与えると考えられています。
そこで、民法改正が行われた場合、相続手続きにいくつか変更がありますので、おおまかに挙げていきます。それぞれの詳細は、今後ご紹介していく予定です。

 

■相続分野にどのような影響がある?

民法改正により、大きく分けて以下の6つの点について変更が予定されています。

 

1. 配偶者を保護する権利の設置(配偶者の居住権)

相続開始時に故人と同居していた配偶者が、継続して居住するための権利が創設されます。相続開始により当然発生する「短期居住権」と、遺言や遺産分割で取得できる「長期居住権」の2つがあります。

現在の相続法では、居住権を確保するためには所有権を取得する必要があります。遺産の中で不動産の価値が大きなウエイトを占める場合、居住を継続するために、不動産以外の預貯金などの財産のほとんどを他の相続人に譲らなければならない状況となる事も多くあります。それを緩和する事が創設理由の一つとされています。

2. 遺産分割に関する変更

婚姻して20年以上経つと、居住不動産を配偶者に贈与する場合に2,000万円の贈与税控除があります。ただし、相続が開始して、遺産分割をする場合に、「特別受益」としていったん遺産に持ち戻して各相続人の取得分を計算する事になり、配偶者の取得分が減る可能性がありました。この持ち戻しを必要としないことが提案されています。

預貯金について、遺産分割前でも、相続人に一定金額を仮に払い戻すことを認める制度が創設されます。

3. 自筆証書遺言についての見直し

自筆証書遺言については、大きな見直しが提案されていて、改正されれば今よりかなり利用しやすくなると思います。

まず、全文自筆から、財産目録については、別紙として添付する場合は自筆を不要とする提案があります。そして、自筆証書遺言を法務局で保管する制度の創設が提案されていて、法務局で保管されている遺言書については、家庭裁判所での検認手続きを不要とする事が提案されています。

4. 遺留分減殺請求についての見直し

現行法では、遺留分減殺請求がなされると、対象となる財産そのもの(現物)を返還するのが原則で、価格弁償が例外的に認められています。これを、完全に金銭請求とする事が提案されています。

5. 相続の効力についての見直し

相続人が、法定相続分を超えて相続財産を取得した場合、その超えた部分の取得を第三者に主張するための対抗要件について、現行法では、「相続させる」との遺言に基づく場合は対抗要件不要とされていて、登記をしないままでも第三者に主張できます。これを、取得方法に関わらず全て対抗要件を必要とする提案がされています。速やかに登記をする必要が出てくることで、登記促進につながる事が期待されています。

6. 相続人以外の親族の貢献についての見直し

相続人が被相続人の療養看護などによりその財産の維持・増加に貢献したと認められれば、遺産分割時に「寄与分」として相続分の上乗せを受けられます。現行法ではこれは相続人だけですが、相続人以外の親族が貢献した場合に、相続人に対して金銭を請求できることが提案されています。

■おわりに

この度の民法改正は、相続・遺言の手続きについて様々な変化をもたらします。
相続トラブルを防ぐためにも、今後の動向をしっかりと確認していく必要があります。