遺言の方法・種類
遺言には、緊急時を除いた通常の場合の方式として、主に、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言があります。
それぞれ長所と短所があり、作成方法に加えてそれぞれのメリット・デメリットについて、以下にご案内しています。
こちらに載っていない事や、載っているけどよく分からないといった場合には、ご遠慮なくお問い合わせ下さい。
些細な事でも気軽にご相談して頂ける様に、相談はいつでも無料にしています。
自筆証書遺言について
自筆証書遺言の作成方法
自筆証書遺言は、「遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押したもの」です(民法968条1項)。
遺言の全文を自筆で書き、日付及び氏名を自書して、押印して作成します。
住所の記載は必須ではありませんが、なるべく明確にしておいた方が良いので、住所も記載しておくことをお勧めしています。
なお、遺言の内容はパソコンで作って、住所・氏名だけ自筆で書いても、遺言は無効です。
最初から最後まで全て自筆で書く必要があります。
※平成31年1月13日から、方式が緩和されます
平成30年7月に相続法が改正され、その中で一番早く施行されるのが、自筆証書遺言の方式の緩和です。
これまで全文自筆であったものが、財産の特定に必要な事項(財産目録)については、パソコンによる作成、登記事項証明書や預貯金通帳の写しを使う方法でもよくなりました。
ただし、自筆ではない財産目録の各ページに、署名押印する必要があります。
複数の不動産や預貯金を、複数の相続人それぞれに遺したい場合は、かなり遺言書作成がしやすくなると思います。
自筆証書遺言のメリット
遺言者一人でいつでも作成でき、費用も全くかかりません。
何度書き直しても費用もかからないため、思い立った時に作りやすいと思います。
なお、書き直す場合には、以前書いた遺言書に修正を加えるのでは無く、新しく全文を書き直して下さい。
もし後々に遺言書が複数見つかった場合には、日付の新しい遺言書が優先されます。
自筆証書遺言のデメリット
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- きちんと保管しておかないと、紛失したり、誰かに隠蔽されるなどの危険があり、変造される危険もあります。
ただ逆に、保管をしっかりしすぎて遺族に見つけられる事が無いままになってしまうという危険もあります。
- きちんと保管しておかないと、紛失したり、誰かに隠蔽されるなどの危険があり、変造される危険もあります。
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- 自筆で書く必要があるため、手が不自由で書くことができない方はこの方式では作成できず、公正証書遺言によることになります。
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- 途中で記載を間違ってしまい訂正などする場合、「変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない」(民法968条2項)とされています。
すなわち、訂正・加筆・削除する場合には、訂正・加筆・削除した箇所に押印し、さらに、欄外余白に、「○○行目○○字削除・加筆・訂正」と記載したうえ署名する必要があります。
方式不備になると訂正しなかったものとして扱われますので注意が必要です。
- 途中で記載を間違ってしまい訂正などする場合、「変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない」(民法968条2項)とされています。
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- 相続開始後、公正証書遺言はすぐに各種手続に使えるのですが、自筆証書遺言書はそのままでは相続手続に使えず、家庭裁判所の検認手続を経る必要があります。
遺族が家庭裁判所に「検認」の申立をして、家庭裁判所で相続人が立会って偽造・変造等がないか確認する手続になります。
詳しくはこちらをご覧ください【自筆証書遺言書の検認手続】
- 相続開始後、公正証書遺言はすぐに各種手続に使えるのですが、自筆証書遺言書はそのままでは相続手続に使えず、家庭裁判所の検認手続を経る必要があります。
- 高齢になって物忘れなどが多く出るようになってから作成した自筆証書遺言は、例えば他の兄弟姉妹から「その頃は父も痴呆が出ていたのをいいことに長男が無理に書かせたものだ」といったクレームが付く可能性もあります。
公正証書遺言について
公正証書遺言の作成方法
公正証書遺言は、遺言者が、公証人と二人以上の証人の面前で遺言内容を述べ、公証人が作成します。
詳細についてはこちらをご覧ください【公正証書遺言について】
公正証書遺言のメリット
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- 公証役場で原本が保管されますので、第三者が偽造や変造することは困難です。
また、必ず公証人が本人と面談をして作成しますので、後日、当時の意思能力などでトラブルになる可能性も少なくなります。
- 公証役場で原本が保管されますので、第三者が偽造や変造することは困難です。
- 相続開始後、自筆証書遺言書の様に家庭裁判所の検認手続などは不要で、そのまま遺言内容の執行手続・相続手続ができます。
公正証書遺言のデメリット
作成する際に、公証人について財産額に応じた手数料、証人2人について謝礼金などが必要です。
秘密証書遺言
秘密証書遺言の作成方法
秘密証書遺言は、遺言書の内容を誰にも知られたくないが、遺言書を作ったことは明らかにしておきたい場合に、自分で作って封印した遺言書を、公証人と2人以上の証人の面前で、さらに公証役場の封筒に入れて封印するものです。
秘密証書遺言のメリット
- 遺言の内容を秘密にしたまま、その存在を公証(明らかに)することができます。
- 自筆証書遺言のように全文自筆でなくてもよく、パソコンで作成する事も可能です。
ただし、署名だけは自筆でする必要があります。
秘密証書遺言のデメリット
- 公正証書遺言と違って、公証役場で保管はしません。そのため、紛失したり、誰かに隠蔽されるなどの危険はあります。
- 自筆証書遺言と同じく、相続開始後に、家庭裁判所で検認手続を経なければなりません。
- 秘密証書遺言は、公正証書遺言と同様の煩雑さがあるわりに、公証人は遺言書の内容までチェックできない(封印されている)ため、相続が開始した時に、方式の不備などで無効となるリスクがあります。
そのため、利用者も少ないのが現状です。
公正証書遺言を作成する際に、証人を、親族とは利害関係の無い第三者(できるだけ親族と遠い関係の方)にして、かつ遺言内容の守秘をお願いすることで、ある程度秘密証書遺言に近い効果を得ることは可能です。
遺言書の保管について
遺言書の保管について、銀行の貸金庫に保管される方もいらっしゃいます。
しかし、亡くなられた後に相続人で貸金庫を開けようとする場合、法定相続人全員の署名押印(実印)と戸籍等の提出が要求されますので、要注意です。
金庫の中にある重要なものは相続人全員の共有物になりうるため、銀行としては、相続人のうちの1人からの要求で金庫を開けるわけにもいきません。
そうすると、せっかく遺言書を作っても、相続人の中に行方不明者がいたり、協力しない者がいると、遺言書を開けることすらできない事態も生じえます。
そのため、遺言書を貸金庫に入れておくのはおすすめできません。
公正証書遺言の場合、原本は公証役場に保管され、遺言者には正本と謄本の2通を渡されます。
相続開始後の各種相続手続では「正本」を使用します。
そのため一般的には、「正本」を遺言によって相続または遺贈を受ける側の者か、遺言執行者に保管してもらい、遺言者の方で「謄本」を保管しています。