清算型遺言について
遺言書で、例えば不動産をABCDの相続人のうちABに相続させたい場合に、「ABに各2分の1ずつ相続させる」と記載すれば、遺言者亡き後、不動産はAB共有名義にすることになります。その後、不動産を売却するなどはABの自由です。
そうではなく、「次の不動産は遺言執行者が売却し、売却代金から諸経費を差し引いた残金を、ABに各2分の1ずつ相続させる」と記載することもできます。これを清算型遺言といいます。受遺者がその後に管理・処分などで手間取らない様に、あるいは、容易に分けられない不動産などを共有名義にして受遺者間で争いが生じる事のない様に、現金にしてから渡したいという場合にはこの方式による事になります。
この清算型遺言について、以下に記載しています。こちらに載っていない事や、載っているけどよく分からないといった場合には、ご遠慮なくお問い合わせ下さい。些細な事でも気軽にご相談して頂ける様に、相談はいつでも無料にしています。
清算型遺言による場合の不動産登記
通常の遺言では、遺言者が死亡すると同時に、受遺者が遺言財産を取得します。例えば不動産をABCDの相続人のうち「ABに各2分の1ずつ相続させる」と記載されている場合は、遺言者の死亡と同時に不動産はABの共有になります。
これに対して清算型遺言では、遺言者が死亡してから精算手続(換金手続)が完了するまでの間は、いったんABCDの(法定相続分での)共有状態になり、清算が完了した残金について、ABに半分ずつ帰属する様になります。
そのため清算型遺言では、不動産の名義をいったんABCDの4人名義に変更してから、売却先の買主名義へ変更する様になります。亡遺言者名義から直接買主名義へ変更することはできません。
ただし、登記にABCD4人の印鑑などが必要かというとそうではありません。遺言書によって指定された遺言執行者だけで全ての登記手続を行う事ができます。具体的には、まず遺言執行者の単独申請でABCD4人名義に変更登記をして、売却が成立したら、遺言執行者と買主とで、買主への売買による所有権移転登記を申請する事になります。
相続人がいない場合の清算型遺贈の登記
相続人が全くいない方が、遺言で、世話になった人に不動産を売却した代金残額を遺贈する場合もあります。
前記の通り、清算型遺言では、不動産の所有権は清算手続の間いったん相続人に帰属します。では相続人が不存在の場合はどのようになるのでしょうか。
相続人不存在の場合、不動産をいったん「亡相続財産法人」名義にして相続財産管理人を選任し、その管理人が売却などの手続きをする事になっています。ただし清算型遺贈の場合は、相続財産管理人を選任する必要は無く、遺言執行者が単独で相続財産法人への名義変更登記をして、売却が成立したら、遺言執行者と買主とで、買主への売買による所有権移転登記を申請する事ができます(登記研究619号219頁)。